乳癌に対する治療方針について

乳癌に対する治療

日本乳癌学会により提示された科学的根拠に基づく乳癌診療ガイドラインに則った治療を行っています。

  • 乳癌診療ガイドライン2022年版:金原出版株式会社

更に2年に一度、国際乳癌学会でのコンセンサス会議の結果も踏まえて、最新の治療方針を決定しています。

検診および診断

人間ドック、乳癌検診の二次検診、精密検査をほぼ毎日行っています。より正確な診断を目的として、デジタル乳房撮影装置(マンモグラフィ)を導入、加えて乳腺超音波検査や乳腺MRI検査を併用することで、画像診断および確定診断のための針生検検査へと迅速な対応を行っています。
また、造影CTを用いたセンチネルリンパ節診断を取り入れて、腋窩リンパ節転移の有無を調べ、治療法の選択を行います。

すでに何かしら症状のある方は保険診療になり、費用は3,000円~5,000円程度となります。
全くの無症状(心配なので検診希望される方や「偶数歳」以外での検診希望)の方は「自己負担」となります。その際、「マンモグラフィーのみ:約10,000円」「エコー検査のみ:約7,000円」「マンモ+エコー:約15,000円」となりますので、ご理解ください。(※市民検診をお考えの方はコチラをご参考ください → 京都市ホームページへ移動

早期乳癌

早期乳癌については、乳癌診療ガイドラインをもとに、十分なコンセンサスを得て治療を開始いたします。具体的には、乳房温存手術を標準手術とし、DCIS(非浸潤癌)確定例には腋窩リンパ節郭清を原則として省略しています。
浸潤癌における腋窩リンパ節郭清については、術中センチネルリンパ節生検の結果に基づいて、郭清の可否を判断することもあります。
手術後治療は、ホルモン依存性に応じた内分泌療法(ホルモン療法)と残存乳腺に対する術後放射線照射(京都大学放射線治療科との連携)を受けていただきます。また、Ki-67等に代表される癌の増殖能や腋窩リンパ節転移の状態に応じて、術後の補助化学療法も積極的に行っております。

乳房温存手術 、乳房再建術について

センチネルリンパ節診断

乳房内にできた癌細胞が乳房内のリンパ管に進入すると、腋のリンパ節(腋窩リンパ節)へ転移し、その後、鎖骨下リンパ節などの遠隔リンパ節へと転移していきます。
癌細胞が近くのリンパ管へ進入したあと、最初に流れ着いた乳房周囲のリンパ節を「センチネルリンパ節(見張りリンパ節)」と呼びます。このリンパ節に癌細胞の転移がなければ、その先のリンパ節には転移がないと判断して、通常の腋窩リンパ節の切除(腋窩リンパ節郭清)はしないというのが”センチネルリンパ節生検法による腋窩リンパ節郭清省略”の理論です。
当科では、このリンパ節の存在を造影剤を使用した胸部CT検査により診断することとしています。存在部位が確定した場合には、手術時に色素を使用したセンチネルリンパ節生検を行います。
しかしながら、数%にセンチネルリンパ節が認められないことがあり、この場合は標準的な腋窩リンパ節郭清をお勧めしております。

進行乳癌

  1. 術前化学療法
    昨今の化学療法の高い奏功率を期待して、手術の前に約3-6ヶ月間の化学療法を行うことで、ある程度の腫瘍の進展をコントロールした後に乳房温存手術等の根治術を行います。
    具体的な薬剤としては、内分泌・ホルモン療法剤のアロマターゼ阻害剤に、注射剤のタキサン系やアントラサイクリン系剤などを効果的に組み合わせる方法をとっています。特に、HER2陽性乳癌例には、分子標的薬(トラスツズマブ+ペルツズマブ、トラスツズマブ エムタンシン等)を加えた治療が有効とされています。
  2. 内分泌・化学療法
    進行・再発乳癌は完全治癒が困難であることが多いことから、QOLの改善と生存期間の延長を目的とした治療が行われます。世界的にコンセンサスが得られているHortobagyiのアルゴリズムに則り、ホルモン療法(アロマターゼ阻害剤、SERD、SERMs、CDK4/6阻害剤)と化学療法に分子標的薬(トラスツズマブ、ラパチニブ、ペルツズマブ、ベバシズマブ、トラスツズマブ エムタンシン)を加えた治療方針が選択されます。

当院における乳癌術後5年生存率 グラフ

本グラフには、当院外科の生存率を表示していますが、進行がんの多い少ない、高齢者の多い少ないなど、他施設において治療している患者さんの構成が異なることがあります。

そのため、単純に生存率を比較して、当院外科の治療成績の良し悪しを論ずることはできません。
このことについてご理解いただけますか?