マンスリー通信(ブログ)

マンスリー通信(ブログ)

患者さんやご家族、お友達に、楽しく穏やかなひとときを過ごしていただきたい。
そんな願いを込め、ホスピス・緩和ケア病棟では四季折々の行事や日々の催しを大切にしています。
ラウンジでの「小さな音楽会」(毎週火曜日午後)や、お部屋に伺う「訪問演奏」(毎週金曜日午後)では患者さんのリクエストにもお応えしています。
アロマセラピー、アートセラピー、お抹茶会なども随時開催しています。

大文字の麓から 〜ホスピス・緩和ケア病棟スタッフのマンスリー通信〜

ひなまつり(2025.3)

3月の第一週は、ひなまつりと、ハートさんとルポゼさんのコンサートがあり、にぎやかにぎやか。

ひなまつりには、ボランティアのYさんが作ってくださった折り紙のおだいりさまとおひなさまをワゴンに載せ、折り紙の箱にお菓子を入れて今月もお部屋をめぐりました。

「女の子じゃないよ」と言いながら、好きな柄の着物(折り紙の柄)を意外とじっくり選ぶ男性陣。
先生も「これいいね」。
看護師さんも「◯◯さん、センスあるわぁ」。
おだいりさまとおだいりさまを選んだ方には
「まあ、今は多様性の時代やからね、これもありやな」
とか、会話が笑いとともに盛り上がります。

お仕事はそれぞれ忙しいはずなんだけど、お部屋で患者さん、ご家族さん、先生と、それから看護師さんと介護士さんとボランティアさんがワイワイするときは、別の時間が流れてる感じがします。
そう、昔、縁側でおかあさんと一緒におひなさまを出したりしまったりしたときのような、小春日和の暖かい日差しのなかのゆったりとした時間。

コンサートでは、患者さんは小さくうなずきながら、時々手を合わせたり、口ずさんだり、眼をつむって何かを思い出しておられたり、よくされます。
その横顔に、時が止まったように感じます。

ホスピスに流れる時間は、不思議で、とてもいい時間です。

音楽という言葉(2025.2)

2月4日と7日、海外から演奏者をお招きし、コンサートを開催しました。

エマ・アリッツァさんは、イタリアのご出身で、今はイギリスを拠点にヨーロッパ各地で演奏活動を行うプロのヴァイオリニストです。

また、エマさんはロンドンのカウンティ・ホール・アーツ(countyhallarts)という、広く人々のために、芸術家の活動や芸術教育を国際的にサポートする慈善団体で活動しておられます。
コンサートは、財団の理事も務めるフルート奏者の園城三花さんの提案で実現し、4日は、ヴィオラとチェロ、フルートとのカルテット、7日は、ピアノとフルートとのアンサンブルの演奏となりました。
両日とも、ディル―ムにベッドで聴いてくださる患者さん、車椅子・椅子に座ってお聴きになる患者さん、ご家族のみなさんが集まり、誰もが聴いたことのある曲を、美しく、繊細に奏でてくださいました。
みなさん、胸に熱い思いを抱かれたようでした。

エマさんにとっては、初めてのホスピスでのコンサート。
終わったあとに、メッセージをいただいたので、ご紹介します。

患者さんが私の演奏を楽しんでくれたと聞いて、とてもうれしく思います。
共演してくださった園城三花さんや、このような経験をさせてくださった病院のお一人おひとりに、とても感謝しています。
ホスピスでのコンサートは私にとって、強く心を揺さぶる特別な体験でした。
コンサートを終えて思うのは、このように私たちは、音楽によってとても深くつながれるということです。
音楽を通し、私たちは時代を超えた普遍的な感情を共有し、過去の偉大な作曲家たちの天才的な精神と直接関わることができます。
そして、そのとき私たちは、とても謙虚な気持ちを抱くのです。
これは、唯一無二の芸術のカタチですが、私はさらに、音楽はひとつの言語でもあるように思うのです。
つまり、言葉を介さずに、最も親密な感情を私たちが話すために音楽はあり、私たちはみな、その意味を感じ、理解することができる。
音楽を通し、私たちはひとつのコミュニティとしてつながっていると感じ、そのとき私たちは、世界にはまだ、希望と美しさが存在すると感じることができるのではないでしょうか。

ホスピスでは、週に2回の音楽療法やコンサート、月に2度のボランティアさんによるコンサートを行っています。 音楽を、大切な時を過ごす患者さんにお届けする大切さを、エマさんのメッセージから改めて感じることができました。

ひとりじゃない(2025.1)

新しい年を迎えました。

お正月早々、スタッフとボランティアさんで年賀状を携え、
「お屠蘇、いかがですかぁ」と、患者さんのお部屋を巡りました。

年末に、ボランティアのⅠさんが作ってくださった年賀状に、
スタッフひとりひとりがメッセージを書きました。

それは、日頃の感謝やねぎらいの言葉だったり、
素晴らしい格言だったり、
アンパンマンのイラストだったり……。
それぞれだけど、どれも愛の表現♡

さて、この日、
ワゴンには、いつもと違う飲み物がずらり。
お屠蘇は、Nナースが早朝からお酒に屠蘇散を仕込み、そのあとみりんを加え、
漆の銚子に移し替えました。
なんだかお正月気分がぐっとあがりました。

そうして、みんなでお部屋へ。
ドクターは獅子舞のかぶりものを被り、
ナースとボランティアさんはお正月飾りや金の扇子を振りながら、
ワイワイ患者さんを囲みます。
「ハッピー ニュー イヤー」のかけごえに、シャッターをパシャリ。
思わずほころぶ患者さんの笑顔。

その笑顔に思います。
みんなでいるのは、いいな。
ひとりじゃないのが、いいな。