当院における出生前診断について 出生前診断は、NIPT・コンバインド検査・クアトロテストといったスクリーニング(非確定)検査と、絨毛検査・羊水検査といった確定検査があります。当院では、NIPT・コンバインド検査・クアトロテスト・羊水検査を行っています。
NIPT (Non-Invasive Prenatal Testing) とは、母体の採血で、赤ちゃんが染色体疾患をもつ可能性をみるための非侵襲性出生前遺伝学的検査です。検査対象となる染色体疾患は 21 トリソミー、18 トリソミー、13 トリソミーです。
妊娠 10 週以降に妊婦さんから 20ml の血液を採取して、血液中に浮遊している cell free-DNA(染色体が細かく分解されたDNA断片)を分析して結果を出します。結果は「陽性」、「陰性」、または「判定保留」と報告されます。
「陽性」とはその疾患の可能性が高いという意味です。妊婦さんの血液中に浮遊している cell free- DNA のうち約 10%が赤ちゃん由来で、正確には胎盤に由来します。そのため NIPT は精度の高い検査ではありますが、胎盤の染色体と赤ちゃんがもつ染色体に乖離がおこりうることが知られており(胎盤モザイクといわれます)、このためNIPTは確定診断とはなりえません。検査結果が「陽性」の場合には、羊水検査での確定診断が必要です。また、「判定保留」の場合には、再度採血をして検査のやり直しを希望されるかなど、その後の対応について再度相談が必要です。
NIPT は 21 トリソミー、18 トリソミー、13 トリソミーの染色体疾患の可能性を調べる検査で、それ以外の疾患はわかりません。全ての赤ちゃんには生まれつきの異常をもつ可能性があり、それは 100 人中に 3 ~ 5 人とされています。この中で染色体が原因の疾患は約 25%で、NIPT の検査対象である 21トリソミー、18トリソミー、13トリソミーは、さらにその約 70%です。つまり、NIPTでわからない生まれつきの異常は、他にたくさんあるということになります。
当院は、日本医学会の出生前検査認証制度等運営委員会が定める認証医療機関の一つです。さらに詳しい情報は、同委員会が運営するHPを参考にされてください。
https://jams-prenatal.jp/
コンバインド検査は、妊娠初期に首の後ろのむくみ(NT)の計測とともに行われる胎児染色体異常のスクリーニング検査で、海外ではNIPTが普及した現在においても、妊婦健診に広く取り入れられています。超音波検査も同時に行うので、胎児自身にエコー上の異常がないかもあわせて確認します。
年齢にかかわらず、染色体異常のリスクについて不安があるがNIPTまでは希望しない方、羊水検査は絶対に受けたくないが出生前検査を受けたい方などに適した検査です。年齢からのリスク値ではなく、自分固有のリスク値を知ることができるので、検査結果をふまえてNIPTや羊水検査を受けるかどうかを考える材料にもなります
妊娠11-13週に検査を行います。エコーで計測する首の後ろのむくみ(NT)と、採血で測定する胎盤から産生される2種類のホルモン値(hCG, PAPP-A)とを組み合わせ、胎児の染色体異常のリスクを算出します。 鼻骨の有無、静脈管血流のパターン、三尖弁逆流の有無、胎児心拍数も、胎児染色体異常のリスクを左右するマーカーとして知られています。コンバインド検査のリスク計算には反映されませんが、エコーの際にはこれらも計測し結果の解釈に取り入れ説明します。
コンバインド検査の結果は、1:〇〇といった値で表示されます。21トリソミーでは1:220, 18トリソミーは1:100より高い確率であれば、ハイリスクとなります。 特に、次にどの検査をしないといけないという決まりはありません。NIPTや羊水検査を希望されるかどうか、外来にて相談させていただくことになります。
基本的には妊娠20週前後の胎児超音波外来で再度胎児の評価をさせていただくことになります。
超音波を行うときに、予期せずNT以外の胎児の異常が見つかる可能性があります。またNTの著明な肥厚を認める場合は、コンバインド検査ではなく直接羊水検査をお勧めすることもあります。
クアトロテストは、お母さんの採血を行い、赤ちゃんが対象の疾患 (21 トリソミー、18 トリソミー、二分脊椎などの開放性神経管奇形) に罹患している確率を算出するスクリーニング検査です。結果がハイリスクの場合、羊水検査を受けるかどうか考慮することになります。
妊娠15週0日から21週6日まで検査をすることが可能ですが、クアトロテストの結果を見てから羊水検査を受ける場合があるため、17週頃までに受けることが望ましいです。 妊婦さんから少量の血液を採取し、血液中の4つの成分 (AFP、hCG、uE3、Inhibin A) を測定します。 これらは妊娠中に赤ちゃんまたは胎盤で作られる成分です。この4つの成分の値と妊婦さんの年齢、妊娠週数、体重、家族歴、インスリン依存性糖尿病の有無、日本人の基準値を用いて、妊婦さん一人ひとりの確率を算出します。
妊娠子宮に細い針を穿刺し、羊水をとって胎児の染色体を調べる検査です。羊水中に含まれる赤ちゃん由来の細胞を培養します。直接赤ちゃんの染色体を解析するため診断的検査とされており、21,18,13番以外の染色体も調べることになります。 検査は妊娠16週以降に日帰りで行います。結果は通常2-3週間で返ってきます。 流産のリスクは、最新の報告で300分の1といわれています。
ご不明な点がございましたらご相談させていただきますので、外来受診時に担当医にお問い合わせください。検査は予約制ですので、事前の予約をお願いしています。