大腸癌研究会により提示された大腸癌治療ガイドラインに基づいた治療を行っています。
早期大腸癌に対しては進行度(深達度)に応じて、消化器内科との連携による大腸内視鏡的粘膜切除を行っています。粘膜切除が行えない粘膜下浸潤癌から漿膜下まで浸潤癌の症例には、SILSを含む腹腔鏡補助による低侵襲手術を積極的に取り入れています。この腹腔鏡手術により開腹創の縮小化が得られ、術後のストレスの軽減、消化管機能温存に寄与します。
結腸癌に対してはD2リンパ節郭清手術を原則としています。原発巣の壁深達度がSS(漿膜下)までで2群リンパ節転移が画像上認められない症例には、腹腔鏡下手術を積極的に導入し、開腹術と同等のリンパ節郭清(D2)を行います。傍大動脈リンパ節転移を認めるものの根治が期待できる進行癌には、所属リンパ節郭清を含めた拡大手術を行います。
進行直腸癌には、術前化学・放射線療法(経口フッ化ピリミジン系剤やCPT-11と放射線照射)を先行し、その2~4週間後に根治術を施行します。その手術には、腹腔鏡下手術を積極的に取り入れ、また、全直腸間膜切除術や自立神経温存手術を導入することで、肛門・排尿・性機能などの骨盤神経機能や、肛門に近い下部直腸癌でも可能な限り肛門括約筋機能、自然肛門温存を目指しています。特に後者では、一時的な回腸人工肛門を超低位前方切除術に併用することで術後縫合不全を未然に予防し、約6ヵ月後に局所再発などの無いことを確認した後に人工肛門を閉鎖することにしています。
肝転移や肺転移を合併する症例にも可能な限り外科的切除を第一選択とし、他臓器浸潤症例には合併切除などの拡大手術を考慮します。
以上の拡大手術でも根治手術が困難と予想される症例には、昨今の化学療法の高い奏功率を期待して、手術の前に約1‐2ヶ月間の化学療法を行うことで、ある程度の腫瘍の進展をコントロールした後に拡大手術を含む根治術を行う、コンバージョン治療も取り入れています。具体的な薬剤としては、内服薬のS-1、カペシタビンや注射剤のL-OHP、CPT-11などと分子標的薬ベバシズマブ、セツキシマブやパニツムマブを効果的に組み合わせる方法で、特にRAS遺伝子に変異のない大腸癌例には有効とされています。
直腸癌などの局所再発に対しては、FDG-PETなどの画像診断を取り入れることで、早期に再発病変を把握し評価するようにしています。この場合の治療にも積極的な外科的切除を第一選択としていますが、切除不能例でも京都大学放射線科との連携による放射線照射療法を導入することで、QOLを考慮した外来通院による治療を行っています。