消化器外科

腹腔鏡補助下胃切除術、胃全摘術について

1.腹腔鏡補助下胃切除術の適応は?

  • 胃良性腫瘍、胃粘膜下腫瘍など、胃の腫瘍部分のみを切除すればよい場合には、腹腔鏡下胃部分切除術が選択されます。
  • 早期胃癌のように、癌組織が粘膜内にとどまり所属リンパ節を一緒に切除する必要がない場合や、早期胃癌でも、癌組織が粘膜下層までにとどまる場合で胃近傍の所属リンパ節をとることで根治性が得られると判断される場合にも腹腔鏡補助下幽門側胃切除術や腹腔鏡下胃全摘術が行われます。

2.腹腔鏡補助下胃切除術、胃全摘術に起こりうる合併症

  • 出血:開腹術に比較すると少ない傾向にありますが、腹腔鏡下の操作で止血が困難な場合には、開腹手術に移行する可能性があります。
  • 吻合部縫合不全:吻合した胃や腸から消化液が漏れる場合があります。その頻度は低く約2~3%です。この場合には、飲水や食事の開始は遅れますが、再手術が必要な場合はほとんどありません。
  • 吻合部狭窄:縫い合わせた部分の浮腫などにより食事の通過が困難となります。手術後1~2週間後より起こりますが、その頻度は約2%です。
  • 腸閉塞:術後の消化管の癒着により起こりますが、開腹術の場合に比べその頻度は少ない傾向にあります。
  • 創感染: 腹部の創が化膿する場合があります。

3.当科における腹腔鏡補助下胃切除術、胃全摘術の位置付け

一般的に癌の外科治療で最も重要なことは、一度の手術で癌を取り去ることであると考えられます。そのうえで同程度に根治性が期待できるのなら、できるだけ身体へのストレスが少なく、かつ術後の回復が早い方法がより良いとの考えから、これまで腹腔鏡での手術が普及してきました。しかしながら、この手術方法にもまだまだ未知の部分も残されています。例えば、進行胃癌に対する腹腔鏡下手術は、術後の再発率などの長期成績が確立されていません。
したがって当科での腹腔鏡下手術の適応は、早期胃癌でも特に所属リンパ節転移の可能性が低い場合にのみ行うこととしています。これらの手術方法の利点と術後合併症などの短所を十分に理解していただいた上で治療を選択していただきます。