消化器外科

腹腔鏡下胆嚢摘出術について

1.腹腔鏡下胆嚢摘出術の適応は?

  • 胆石症、慢性胆嚢炎など:胆嚢周囲の癒着が軽度と考えられる場合には、腹腔鏡下胆嚢摘出術が薦められます。
  • 胆嚢ポリープ:良性ポリープの場合は胆嚢のみの摘出でよいため、腹腔鏡下胆嚢摘出術が選択されます。
  • 胆嚢腫瘍:良性、悪性の鑑別が困難な場合には、診断的治療の意味で腹腔鏡下胆嚢摘出術が選択されることがあります。もしも術後の病理学的検索により悪性と診断された場合、開腹手術による根治術が追加になる場合があります。

2.腹腔鏡下胆嚢摘出術に起こりうる合併症

  • 腹腔内出血:開腹術に比較すると少ない傾向にありますが、腹腔鏡下の操作で止血が困難な場合には、開腹手術に移行する可能性があります。
  • 胆汁漏れ、肝機能障害:胆嚢床からの細小胆管からの胆汁の漏れや肝血流の障害による一時的な肝機能障害は、殆どが保存的に軽快します。
  • 臓器損傷:胆管損傷による胆汁漏出、消化管損傷による消化液の漏出による腹膜炎が主たる症状です。これらの合併症の発生頻度は、極めてまれですが、原則として開腹術へ移行して損傷部の修復を行います。
  • 創感染:腹部の創が化膿する場合があります。

3.開腹手術への移行について

以前の腹腔内手術の影響や腹腔内炎症の影響に起因する臓器の癒着が強く認められる場合や手術中の出血の止血が難しい場合には、腹腔鏡下の手術による危険性が高くなります。このような場合には、開腹手術に移行し、安全な手術方法を取ることがあります。腹腔鏡下胆嚢摘出術の際の開腹手術への移行頻度は数%と報告されています。

4.単孔式胆嚢摘出術 (SILS: Single Incision Laparoscopic Surgery) について

単孔式胆嚢摘出術(SILS)とはSingle Incision Laparoscopic Surgeryの略語で、臍に1ヶ所の孔をあけ、その孔だけで腹腔鏡下の手術を行う方法です。3~4ヶ所に孔をあける従来の腹腔鏡下手術と比べて、傷口が1ヶ所のため美容上優れています。手術痕はほとんど目立たず、傷口の痛みも軽度です。その反面、手術操作が制限されるために高度な技術と手術の慣れ(手術経験)が必要とされます。当科でもSILSによる胆嚢摘出術を導入し、現在まで順調に症例を蓄積しております。適応に関しては、担当医にご相談ください。

  • SILSの利点:臍を縦に2~3センチ切開するのみで、傷口が目立たず、術後の痛みが少なく、術後の回復が早い。
  • SILSの適応疾患:胆嚢ポリープ、胆嚢腺筋症などの良性疾患や軽度な炎症までの胆嚢結石症
  • SILSの入院期間:全身麻酔を要する治療ですので、手術に必要な検査は外来で行い、手術の前日に入院し、手術後3日目以降に退院します。

従来の手術創3〜4箇所 SILSの手術創臍のみ1箇所

開始直後 開始直後 胆嚢管の切離 胆嚢管の切離